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- ABL(動産担保融資)の仕組みと担保の種類
- ABLとファクタリングの具体的な違い(比較表あり)
- 建設業でABLを活用できるケースと注意点
- ABLよりファクタリングが適している状況
- よくある疑問への回答(FAQ形式)
執筆者:高橋廉。FA会社に8年間勤務し、審査担当として年間400件以上・累計3,000件超の審査書類を処理。現在はファクタリングの教科書を運営し、資金調達の実務情報を発信しています。
資金繰りに悩む建設業・製造業の経営者の方に向けて、ABL(動産担保融資)とは何かを、ファクタリングとの違いも踏まえながら解説します。
銀行融資では「担保になる不動産がない」と断られた経験はないでしょうか。ABLは、在庫・機械設備・売掛金といった事業資産を担保にして融資を受ける仕組みです。不動産を持たない中小企業でも利用しやすい資金調達手段として、近年注目を集めています。
この記事ではABLの基本的な仕組みから、ファクタリングとの比較、建設業での具体的な活用場面まで整理しています。最後まで読むと、自社の資金調達にどちらが向いているかを判断できるようになります。
ABL(動産担保融資)とは?不動産なしで資金調達できる融資の仕組み
ABLとは「Asset Based Lending」の略で、日本語では動産・売掛金担保融資と呼ばれます。不動産ではなく、企業が保有する動産(在庫・機械設備・農畜産物など)や売掛債権(取引先への未回収代金)を担保として金融機関から融資を受ける手法です。
従来の銀行融資は土地・建物などの不動産担保を中心に設計されていました。しかし中小企業の多くは担保にできる不動産を持っていません。そこで登場したのがABLです。事業そのものから生まれる資産を担保にすることで、不動産を持たない企業でも融資を受けやすくなるという考え方に基づいています。
日本ではABLの普及を促進するため、金融庁・経済産業省・農林水産省が「ABL(動産・売掛金担保融資)の活用促進に向けた方針」を策定しています。特に製造業・農業・建設業での活用が期待されています。
- 正式名称:Asset Based Lending(動産・売掛金担保融資)
- 担保:在庫・機械設備・売掛金・農畜産物など
- 融資主体:銀行・信用金庫・信用組合・ノンバンク
- 返済方式:分割返済(融資)
- 日本での普及:2003年頃から金融庁が推進
実務の現場では、製造業の企業がABLを活用しているケースが少なくありません。機械設備を担保に数千万円の融資を引き出し、その資金でさらに受注を増やすという使い方です。不動産担保で断られた後にABLで通ったというパターンも珍しくありません。
ABLの仕組み:担保の種類と融資を受けるまでの流れ
ABLの仕組みを理解するには、担保になるものと融資の流れを押さえることが重要です。
ABLで担保になる主な資産
| 担保の種類 | 具体例 | 評価のしやすさ | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 売掛金・売掛債権 | 工事代金・納品済み商品の未回収代金 | ◎ 評価しやすい | 取引先の信用力も審査される |
| 在庫・製品 | 原材料・仕掛品・完成品 | △ 価値変動あり | 換金性・陳腐化リスクを見られる |
| 機械・設備 | 工作機械・建設重機・製造ライン | ○ 評価可能 | 減価償却・残存価値が重要 |
| 農畜産物 | 牛・豚・農作物(収穫前を含む) | △ 専門的評価が必要 | 農業者向けABLで対応 |
この表のポイントは、売掛金・売掛債権が最も評価しやすく、ABLの担保として使われやすいという点です。逆に在庫は価値が変動するため、融資額が保守的に設定されることが多くなります。
ABL融資を受けるまでの流れ
【図解】ABL・通常融資・ファクタリングの構造比較
↓
融資(借入)
↓
分割返済
↓
融資(借入)
↓
分割返済+モニタリング
↓
売却(債権譲渡)
↓
返済不要・1回完結
ABLは不動産なしで融資を受けられる一方、返済義務とモニタリング負担がある点に注意
担保資産の洗い出しと相談
金融機関の担当者に連絡し、担保にできる資産(在庫・売掛金・機械設備など)をリストアップします。この段階では、資産の現物確認(現地調査)が行われる場合があります。
担保評価・審査
金融機関が担保資産の価値を評価します。売掛金なら取引先の信用力、在庫なら換金性、機械設備なら残存価値が審査のポイントになります。
融資契約・担保設定登記
審査が通ったら融資契約を結びます。動産を担保にする場合は動産譲渡登記(「この機械を担保に入れました」と法務局に記録する手続き)が必要になる場合があります。売掛金の場合は債権譲渡登記を行うケースもあります。
融資実行・モニタリング
融資が実行されます。返済期間中は担保資産の価値変動を定期的にモニタリングされます。在庫が大幅に減った場合は追加担保を求められることもあります。
ABLは融資後も担保資産のモニタリングが継続します。在庫の棚卸結果の報告・売掛金残高の定期提出など、管理コストがかかります。運用負担を考慮した上で検討することが重要です。
ABLとファクタリングの違い:比較表でわかりやすく整理
「ABLとファクタリングは何が違うの?」という質問はよく受けます。どちらも売掛金を活用した資金調達ですが、仕組みと性質が根本的に異なります。
| 比較項目 | ABL(動産担保融資) | ファクタリング |
|---|---|---|
| 取引の性質 | 融資(借入) | 債権の売買(買取) |
| 返済義務 | あり(分割返済) | なし(売掛金で自動精算) |
| 貸借対照表(B/S)への影響 | 負債が増加 | 売掛金が減少(負債増加なし) |
| 担保 | 動産・売掛金・在庫等 | 売掛債権そのもの(担保概念なし) |
| 費用 | 利息+諸費用(登記費用など) | 手数料(売掛金の1%〜18%程度) |
| 審査の軸 | 担保資産の価値+信用力 | 売掛先(取引先)の信用力中心 |
| 資金化までの時間 | 数週間〜1ヶ月以上 | 最短即日〜数日 |
| モニタリング | 定期的な担保評価・報告が必要 | 1回完結(モニタリングなし) |
| 向いているシーン | 中長期の運転資金・設備投資 | 急ぎの資金繰り改善・単発対応 |
この表のポイントは「ABLは融資(借入)、ファクタリングは売却」という根本的な違いです。ABLは返済義務があり負債が増えますが、ファクタリングは売掛金を売却するため負債が増えません。財務内容を改善したい場合にはファクタリングの方が有利に働くことがあります。
- 急ぎで資金が必要 → ファクタリング(最短即日)
- B/Sの負債を増やしたくない → ファクタリング
- まとまった資金を中長期で調達したい → ABL
- 在庫・機械設備を担保にしたい → ABL
FA会社にいたとき、「ABLとファクタリングのどちらを使うべきか」という相談は頻繁にありました。正直なところ、緊急性がある場合はほぼ全員にファクタリングを案内していました。ABLは手続きに時間がかかるため、「今月末の支払いに間に合わない」という状況では現実的な選択肢になりにくいのです。



建設業でABLが使えるケース
建設業はABLとの相性が比較的良い業種です。その理由は、重機・建設機械といった高価な動産資産と、工事代金という明確な売掛債権の両方を保有しているからです。
建設業でABLが活用されやすい場面
| 活用場面 | 担保にする資産 | 想定される融資規模 |
|---|---|---|
| 大型工事受注前の資金準備 | 工事完成後の売掛金(工事請負代金債権) | 数百万〜数千万円 |
| 重機・建設機械の購入資金 | 既存の重機・機械設備 | 機械の時価相当額 |
| 資材・材料費の調達 | 在庫資材(鉄骨・木材・配管材等) | 在庫評価額次第 |
| 長期工事中の運転資金 | 出来高払い債権(既納部分の請求権) | 出来高相当額 |
この表のポイントは、建設業では工事請負代金債権(工事完了後の売掛金)をABLの担保に使えるケースが多いという点です。大型工事を受注したものの、完成まで数ヶ月かかるというケースで、工事代金を担保に着工資金を調達する用途が代表的です。
建設業の多くは元請け→一次下請け→二次下請けという多重構造で成り立っています。下請け業者の場合、元請けへの工事代金請求が担保の中心になります。ABLを検討する際は、担保とする売掛先(元請け)の信用力が審査に大きく影響します。大手ゼネコンへの売掛金なら評価が高くなりますが、信用力の低い元請けへの売掛金は担保評価が下がる場合があります。
- 工事請負代金は完成前に譲渡禁止特約が付いている場合があります
- 公共工事の請負代金は原則として譲渡禁止(特例法による例外あり)
- 担保設定後に工事が中断・解約になった場合、担保価値がゼロになるリスクがあります
ABLのメリット・デメリット
ABLのメリット
- 不動産担保がなくても融資を受けられる:土地・建物がなくても在庫・機械・売掛金などの事業資産で融資を引き出せる。設立間もない会社や賃貸事務所の中小企業でも利用できます
- まとまった融資額を得やすい:担保資産の価値によっては数千万円規模の融資も可能。中長期で使える運転資金・設備投資資金として活用できます
- 金利は比較的低め:ABLの金利は年1〜5%程度が目安。ファクタリング手数料(2〜18%)と比較すると、長期利用では総コストが低くなることが多いです
- 企業の与信枠を温存できる:不動産以外の資産を担保にするため、既存の銀行借入枠を使わずに資金調達できます
ABLのデメリット
- 手続きに時間がかかる:担保評価・現地調査・登記手続きが必要で、資金化まで数週間〜1ヶ月以上かかるケースがあります
- 管理負担が大きい:融資後も定期的な担保資産の報告・棚卸が必要です。小規模企業には運用コストが重荷になることがあります
- 担保割れリスク:在庫や機械設備の価値が下落すると、追加担保を求められる場合があります
- 対応できる金融機関が限られる:ABLに積極的な金融機関はまだ多くありません。特に地方では取り扱い機関が少ない場合があります
- 登記費用が発生する:動産譲渡登記・債権譲渡登記には登録免許税(1件7,500円〜)と司法書士費用が別途かかります
よくある話ですが、「ABLを申し込んだが手続きが煩雑で途中で断念した」というケースも少なくありません。特に決算期近くに急ぎで資金が必要な場合は、ABLの手続き期間がネックになります。
ABLよりファクタリングが向いているケース
建設業・製造業の経営者の方から「ABLとファクタリング、どちらを選ぶべきか」という相談を受けることがあります。以下の条件に当てはまる場合は、ファクタリングの方が現実的な選択肢になります。
| 状況 | ABL | ファクタリング |
|---|---|---|
| 今月末・来週の支払いに間に合わない | ✗ 手続きが間に合わない | ◎ 最短即日対応可 |
| 決算書の内容が良くない(赤字・債務超過) | ✗ 審査通過が困難 | ○ 売掛先の信用力で判断 |
| B/Sの負債を増やしたくない | ✗ 借入が増える | ◎ 負債が増えない |
| 担保にできる動産・設備がない | ✗ 申し込み要件を満たせない | ◎ 売掛金さえあれば可 |
| 1回だけ単発で資金調達したい | △ 継続モニタリングが発生 | ◎ 1回完結 |
この表のポイントは、緊急性・財務改善・手続きの手軽さという観点ではファクタリングが優位であるという点です。手数料が発生するのは事実ですが、「緊急時のつなぎ」として使う分には十分合理的な選択です。
手数料が高く感じるのは当然です。ただし、ABLの登記費用・諸手続き費用・モニタリングコストを合算すると、短期の資金調達では総コストが近づく場合もあります。ファクタリングはあくまで常用ではなく、緊急時のつなぎとして使うことが適切です。
建設業向けのファクタリングを専門に取り扱う業者も存在します。工事代金の前払いや出来高払いに対応した案件でも審査を受け付けているところが多く、ABLより早く資金化できます。建設業特化型のファクタリング業者については、以下の記事で詳しく解説しています。
よくある質問
ABLとファクタリングは同じものですか?
異なる金融手段です。ABLは「融資(借入)」で返済義務があります。ファクタリングは「売掛金の売却」で返済義務はありません。どちらも売掛金を活用できますが、仕組みと財務への影響が根本的に違います。
建設業でABLを使うには何が必要ですか?
担保にできる資産(工事請負代金債権・重機設備・資材在庫など)と、金融機関への申し込みが必要です。審査では担保資産の評価に加え、財務状況・事業の継続性も確認されます。対応できる金融機関に事前相談することをお勧めします。
ABLはどこで申し込めますか?
取引のある銀行・信用金庫に相談するのが最初のステップです。ABLに積極的に取り組む金融機関かどうかを確認することが重要です。日本政策金融公庫でも動産・売掛金担保融資の取り組みがあります。
ABLで審査に通りやすい条件はありますか?
担保資産の価値が明確で換金性が高いほど審査は通りやすくなります。大手企業への売掛金・新しい機械設備・流動性の高い在庫が評価されやすいです。逆に陳腐化した在庫や、信用力の低い取引先への売掛金は担保評価が低くなります。
ファクタリングとABLを同時に使えますか?
原則として同一の売掛金を両方の担保・譲渡に使うことはできません。ただし、異なる売掛金であれば、一方でABLの担保とし、別の売掛金でファクタリングを利用するという組み合わせは可能です。金融機関とファクタリング会社の双方に確認が必要です。
ABLの金利・費用はどれくらいかかりますか?
金融機関や担保の種類によって異なりますが、金利は年1%〜5%程度のケースが多いです。これに加えて動産譲渡登記費用(登録免許税+司法書士費用で数万円〜)やモニタリング費用が発生することがあります。融資前に総コストを確認することが重要です。
公共工事の請負代金はABLの担保にできますか?
公共工事の請負代金は、公共工事の前払金保証事業に関する法律等により原則として譲渡が禁止されています。ただし「公共工事に係る債権の譲渡の特例に関する法律(公共工事譲渡特例法)」に基づく手続きを行うことで、条件を満たした場合に担保として利用できる場合があります。専門家への相談が不可欠です。
赤字決算でもABLは使えますか?
通常の銀行融資より審査の間口は広いとされますが、赤字・債務超過の場合は審査が厳しくなることが多いです。担保資産の価値が十分あれば通るケースもありますが、保証はありません。赤字の状況で急ぎの資金が必要な場合は、売掛先の信用力を主に審査するファクタリングの方が現実的な場合があります。
まとめ:ABLとファクタリングの使い分けポイント
- ABL(動産担保融資)は不動産なしで在庫・機械・売掛金を担保に融資を受ける仕組み
- ABLは融資(返済義務あり・負債増加)、ファクタリングは売却(返済義務なし・負債増加なし)
- 建設業ではABLが活用できるケースがあるが、公共工事の制限・工事中断リスクに注意が必要
- 緊急性・財務改善・手続きの手軽さではファクタリングが優位
- 中長期での資金調達・在庫や設備を担保にしたい場合はABLが選択肢になる
ABLとファクタリングはどちらが「良い・悪い」ではなく、状況に応じて使い分けることが重要です。急ぎの資金繰り対応にはファクタリング、中長期の設備投資資金にはABLという棲み分けが実務上の目安になります。
建設業での資金調達に関してさらに詳しく知りたい場合は、建設業向けファクタリング会社の比較記事もご確認ください。
建設業の工事代金・下請け業者向けファクタリングを取り扱う会社を比較しています。ABLの手続きを待てない場面での代替手段として参考にしてください。
出典・参考資料
- 金融庁「ABL(動産・売掛金担保融資)の積極的活用について」(2013年2月5日)
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130205-1.html - 中小企業庁「流動資産担保融資保証制度(ABL保証)の活用促進」
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/ryudo.html - 日本政策金融公庫 中小企業向け融資制度
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/index_c.html - 法務省「動産・債権譲渡登記制度」(動産譲渡登記の根拠)
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji08.html




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