売掛金の時効は原則5年です(民法第166条)。時効が成立すると、法的に代金を請求する権利を失います。
FA会社で8年間、売掛金の回収が滞った経営者の相談を受けてきました。「まだ大丈夫だろう」と放置した結果、時効で回収不能になったケースもあります。この記事では、売掛金の時効のルール・時効を防ぐ方法・回収できない場合の対処法を解説します。
- 売掛金の時効は原則5年。起算日の考え方
- 時効を止める3つの方法(催告・承認・訴訟)
- 時効前に売掛金を確実に回収する方法
売掛金の時効は原則5年
2020年4月の民法改正により、売掛金の消滅時効は「権利を行使できることを知った時から5年」に統一されました(民法第166条第1項)。改正前は業種によって1〜3年の短期消滅時効がありましたが、現在は全業種5年です。
時効の起算日はいつか
時効の起算日は「支払い期日の翌日」です。月末締め翌月末払いの取引で5月31日が支払い期日なら、6月1日から5年間で時効が成立します。
| 取引例 | 支払い期日 | 時効の起算日 | 時効成立日 |
|---|---|---|---|
| 2024年4月分の売上 | 2024年5月31日 | 2024年6月1日 | 2029年5月31日 |
時効が成立するとどうなるか
時効が成立すると、取引先が「時効を援用する」(時効を主張する)ことで、法的に代金を請求する権利が消滅します。時効が成立しても自動的に権利がなくなるわけではなく、相手が「援用」しなければ請求は可能です。ただし実務上、時効成立後に支払いを得られるケースはほぼありません。
旧法との違い
2020年3月31日以前に発生した売掛金には旧民法が適用されます。旧法では業種ごとに異なる短期消滅時効がありました。
| 時効期間 | 対象(旧法) | 現行法(2020年4月〜) |
|---|---|---|
| 1年 | 飲食店・宿泊業の代金 | 全業種5年に統一 |
| 2年 | 製造業・小売業の売買代金 | |
| 3年 | 建設業の工事代金 |
売掛金の時効を止める3つの方法
時効が迫っている場合でも、以下の3つの方法で時効を「更新」(リセット)または「完成猶予」(一時停止)できます。
催告:内容証明郵便で支払いを請求する
内容証明郵便で支払いを催告すると、催告から6か月間、時効の完成が猶予されます(民法第150条)。この6か月の間に訴訟提起や調停申立てを行えば、時効を確定的に止められます。
催告は「時間稼ぎ」であり、催告だけで時効がリセットされるわけではありません。催告後6か月以内に法的手続きに移行する必要があります。
債務の承認:相手に支払い意思を確認させる
取引先が売掛金の存在を認める行為(一部の支払い・支払い猶予の申し入れ・残高確認書への署名等)があれば、時効がリセット(更新)されます(民法第152条)。
月間200件超の審査を担当していた頃、取引先に「残高確認書」を送って署名をもらうことで時効リスクを管理していた経営者がいました。定期的に残高確認を行うだけで、時効の心配はほぼなくなります。
裁判上の請求:訴訟・支払督促
訴訟を提起するか、簡易裁判所に支払督促を申し立てれば、時効が確定的に更新されます。判決が確定すると、時効期間は10年に延長されます(民法第169条)。
支払督促は弁護士なしでも申し立て可能で、手数料も訴訟の半額です。少額の売掛金であれば費用対効果の高い方法です。
時効前に売掛金を確実に回収する方法
請求管理の徹底・ファクタリングでの早期回収・取引信用保険の3段階で、時効を待たずに売掛金を確実に回収する仕組みを作ってください。
請求管理を徹底する
支払い期日を過ぎた売掛金を毎月リストアップし、入金確認→督促→交渉の流れを仕組み化してください。「放置」が時効リスクの最大の原因です。
ファクタリングで早期回収する
回収リスクが高い売掛金は、ファクタリングで支払い期日前に現金化する方法があります。ノンリコース型(償還請求権なし)のファクタリングなら、売掛先が支払わなかった場合のリスクもファクタリング会社が負担します。
時効の心配以前に、支払いサイトが長い売掛金を抱え続けること自体が資金繰りのリスクです。回収に不安がある売掛金は、手数料を払ってでも早期に現金化するほうが安全です。手数料の詳細は「ファクタリング手数料の相場」を参照してください。
取引信用保険で回収リスクをヘッジする
大口取引先への依存度が高い場合、取引信用保険に加入して売掛金の回収リスクを保険でカバーする方法もあります。取引先が倒産した場合に保険金が支払われるため、連鎖倒産のリスクを軽減できます。
売掛金の時効に関するよくある質問
よく寄せられる質問と回答をまとめました。
売掛金の時効は何年ですか?
2020年4月以降に発生した売掛金は原則5年です(民法第166条)。2020年3月以前の売掛金には旧法(業種により1〜3年)が適用されます。
時効が成立すると売掛金は回収できなくなりますか?
相手が時効を援用(主張)すれば、法的に請求権が消滅します。ただし時効成立後でも、相手が任意に支払うことは可能です。実務上、時効後の回収は極めて困難です。
時効を止める方法はありますか?
催告(内容証明郵便)、債務の承認(残高確認書への署名等)、裁判上の請求(訴訟・支払督促)の3つがあります。最も手軽なのは残高確認書を送って署名をもらう方法です。
内容証明郵便を送れば時効はリセットされますか?
リセットはされません。催告から6か月間、時効の完成が猶予されるだけです。6か月以内に訴訟等の法的手続きに移行しなければ、猶予が終了して時効が進行します。
時効が心配な売掛金をファクタリングで現金化できますか?
支払い期日前の売掛金であればファクタリングで現金化可能です。ノンリコース型なら売掛先の未払いリスクもファクタリング会社が負担します。時効の心配がある売掛金は、手数料を払ってでも早期に現金化するほうが安全です。
売掛金の管理で最低限やるべきことは?
毎月末に支払い期日を過ぎた売掛金をリストアップし、30日超過で電話督促、60日超過で書面督促、90日超過で法的対応を検討してください(一般的な実務慣行に基づく目安です)。定期的な残高確認書の送付も時効管理に有効です。
少額の売掛金でも回収のために訴訟すべきですか?
60万円以下の場合は少額訴訟(1回の期日で判決)が利用でき、弁護士なしでも手続き可能です。支払督促も手数料が訴訟の半額で済むため、少額でも費用対効果があります。
売掛金の時効と支払いサイトの関係は?
支払いサイトが長いほど、売掛金が滞留する期間が長くなり、管理の手間と時効リスクが増します。サイトの短縮交渉やファクタリングによる早期回収が、時効リスクの根本的な対策です。
まとめ
売掛金の時効は原則5年です。2020年4月の民法改正で全業種に統一されました。支払い期日の翌日から起算し、5年が経過すると法的な請求権を失います。
時効を防ぐ最も確実な方法は「放置しないこと」です。毎月の残高確認、期日超過時の速やかな督促、残高確認書の定期送付で時効リスクはほぼゼロにできます。
回収に不安がある売掛金は、時効を待たずに対処してください。ファクタリングでの早期現金化、内容証明郵便での催告、支払督促の申立てなど、状況に応じた手段を選んでください。
出典・参考資料


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