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取適法の支払期日は、原則として給付を受領した日から60日以内です。
ただし、実務で危ないのは「請求書を受け取ってから60日」「検収が終わってから60日」と思い込むことです。
公正取引委員会の取適法テキストでは、検査の有無を問わず、受領日から起算して60日以内に定めた支払期日までに全額を支払う必要があると整理されています。
2026年1月1日の改正では、下請法が中小受託取引適正化法、通称「取適法」に変わりました。
名称変更だけでなく、手形払いの禁止、でんさいや一括決済方式の制限、協議に応じない一方的な価格決定の禁止、従業員数基準の追加など、資金繰りに直結する変更が入っています。
この記事では、取適法の60日ルール、2026年改正のポイント、違反時の勧告・遅延利息・罰則、支払いが遅れたときの動き方を整理します。
- 取適法の支払期日が60日以内とされる理由
- 「受領日」「検収日」「請求書日付」の違い
- 支払期日を定めない場合と60日超で定めた場合の扱い
- 2026年改正で変わった手形・でんさい・価格協議のルール
- 違反したときの勧告、公表、遅延利息、罰金の整理
- 受注側が支払い遅延に気づいたときの確認手順
取適法の支払期日は60日以内
取適法の支払期日は、委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日から起算して60日以内に定める必要があります。
ここでいう60日は上限であり、できる限り短い期間内に定めることが求められています。
「60日までは常に待たせてよい」という意味ではありません。
支払期日は、請求書の日付ではなく、給付の受領日を起点に見るのが基本です。
まず結論。
取適法では、受領日から60日以内に支払期日を定め、その期日までに代金を全額支払う必要があります。
| 確認項目 | 原則 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 起算日 | 給付を受領した日 | 検収完了日や請求書到着日ではない |
| 支払期日 | 受領日から60日以内 | 60日は上限で、できる限り短く定める |
| 期日未設定 | 受領日が支払期日とみなされる | 支払条件の空欄は危険 |
| 60日超の期日 | 60日目が期日とみなされる | 契約書に書いてもそのまま有効とは限らない |
| 遅延した場合 | 遅延利息の対象 | 年率14.6%で計算される |
「60日以内」は支払いサイトの上限
取適法の60日ルールは、委託事業者が代金を先延ばししすぎないための上限です。
発注側から見ると、締め日や社内支払日を整えるためのルールに見えるかもしれません。
受注側から見ると、材料費、外注費、人件費、税金の支払いを守るための生命線です。
支払いが1か月遅れるだけでも、手元資金の薄い中小企業では黒字倒産につながります。
60日ぎりぎりにすればよいわけではない
法律上の文言は、60日以内で、かつ、できる限り短い期間内に定めるという構造です。
そのため、すべての取引を機械的に60日後へ寄せる運用は、制度の趣旨から見て強いとはいえません。
発注側は、契約書、発注書、検収フロー、支払予定表をまとめて確認する必要があります。
受注側は、発注書に書かれた支払期日が本当に受領日から60日以内かを先に見てください。
月末締め翌々月末払いは危ない
月末締め翌々月末払いは、納品日によっては60日を超えます。
たとえば5月1日に納品し、7月31日に支払う運用なら、受領日から支払日まで90日を超えます。
「月末締めだから大丈夫」ではなく、個々の受領日から支払日までを数える必要があります。
締め日から60日以内ではなく、受領日から60日以内です。
支払日が金融機関休業日に当たる場合
支払日が金融機関の休業日に当たる場合、事前合意と書面化があれば2日間までの順延が認められる整理があります。
ただし、毎回のように休業日を理由に後ろ倒しする運用は避けるべきです。
発注側は、支払予定日が土日祝日に当たる月だけ例外処理になるよう、経理カレンダーで管理してください。
受注側は、入金予定表に「順延の根拠」と「実際の入金日」を残しておくと交渉しやすくなります。
支払期日の起算日はいつか
取適法で最も誤解されやすいのは、60日の数え始めです。
起算日は、原則として中小受託事業者から物品や成果物を受け取った日です。
役務提供委託や特定運送委託では、役務の提供を受けた日が起点になります。
請求書の発行日、月末の締め日、社内承認日を起点にすると、実際の受領日から60日を超えるおそれがあります。
| 取引の種類 | 起算日の考え方 | 間違えやすい日付 |
|---|---|---|
| 物品の製造委託 | 物品を受領した日 | 検収完了日 |
| 修理委託 | 修理された物を受け取った日 | 請求書到着日 |
| 情報成果物作成委託 | 成果物を受領した日 | 社内レビュー完了日 |
| 役務提供委託 | 役務の提供を受けた日 | 報告書受領日 |
| 特定運送委託 | 運送が完了した日 | 配達報告が届いた日 |
検収が終わっていなくても受領日は動かない
公正取引委員会のQ&Aでは、検査するかどうかにかかわらず、情報成果物の受領後60日以内に支払う必要があると説明されています。
つまり、検収に時間がかかることを理由に、支払期日の起算日を後ろへずらす運用は危険です。
発注側の社内確認が遅れても、受注側の資金繰りは止まりません。
発注時点で検査期間を短く設計し、60日以内に支払える流れにしておく必要があります。
請求書の遅れを理由に60日を伸ばせない
請求書が遅れて届いた場合でも、起算日の基本は受領日です。
発注側の経理処理が請求書ベースでも、法律上の支払期日管理は給付ベースで見る必要があります。
受注側は、請求書の発行日だけでなく、納品書、検収書、作業完了報告、配達完了記録を保管してください。
どの日に給付が完了したかを示せると、支払期日の交渉が具体的になります。
運送は報告書の日ではなく完了日を見る
特定運送委託では、運送が完了した日が支払期日の起算日になります。
配達報告書が翌日に届いたとしても、完了日そのものが後ろへ動くわけではありません。
運送会社や建設資材の配送を受ける会社は、配達完了日と支払予定日の差を確認してください。
運送費の支払いが長い会社ほど、取適法後は運用を見直す必要があります。
支払期日を定めないと受領日が期日になる
支払期日を定めなかった場合、法律上は受領日が支払期日とみなされます。
「後で決める」「毎月の慣行どおり」といった曖昧な運用は、発注側にとっても危険です。
支払期日を60日超で定めた場合は、受領日から60日を経過した日の前日が期日とみなされます。
契約書に長い支払サイトを書いても、そのまま守られるとは限りません。
ここが落とし穴。
「支払期日を書いていない」「締め日だけ書いている」「検収後60日と書いている」は、どれも実務で揉めやすい形です。
2026年改正で何が変わったか
2026年1月1日から、下請法は取適法として新たに施行されています。
正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。
通称の「取適法」は、中小受託取引の適正化を前面に出すための呼び方です。
改正の中心は、受注側に資金繰り負担を押し付ける古い商慣習を減らすことです。
| 改正ポイント | 改正後の扱い | 資金繰りへの影響 |
|---|---|---|
| 法律名と用語 | 下請法から取適法へ | 受注側保護の色が強くなる |
| 手形払い | 支払手段として禁止 | 現金化までの待ち時間が減る |
| でんさい等 | 期日までに満額現金化できないものは禁止 | 割引料負担の押し付けを避ける |
| 振込手数料 | 受注側負担は減額として問題化 | 少額でも手取りを守れる |
| 価格協議 | 協議拒否や説明不足の一方決定を禁止 | 原価高騰分の交渉根拠になる |
| 適用範囲 | 従業員数基準などを追加 | 対象取引の見落としを防ぐ必要 |
手形払いは禁止された
2026年改正で大きいのは、支払手段としての手形払いが禁止されたことです。
従来は、支払日に手形を渡されても、実際に現金化できるのはさらに先という取引がありました。
これでは、受注側が材料費や外注費を先に負担し続けることになります。
取適法後は、支払期日までに代金の満額に相当する金銭を受け取れる状態が重視されます。

でんさいや一括決済方式も条件付き
電子記録債権や一括決済方式は、すべて禁止されたわけではありません。
問題になるのは、支払期日までに代金相当額の満額を金銭で受け取れない仕組みです。
割引料や手数料を受注側が負担しないと現金化できない場合、取適法上の支払遅延として問題になります。
「紙の手形をやめてでんさいにしたから安心」とは言い切れません。

振込手数料を差し引く運用も危険
振込手数料を受注側に負担させ、代金から差し引いて支払う行為は、代金の減額として問題になります。
契約書に「振込手数料は受注者負担」と書いていても、安全とは限りません。
少額だから見逃されると考えるのではなく、発注時に決めた代金を満額支払う設計に変える必要があります。
受注側は、振込額が請求額より少ないときに、差額の名目を必ず確認してください。
価格協議に応じない一方的な決定は禁止
2026年改正では、価格協議を求められたのに協議へ応じない行為が明確に問題視されます。
労務費、原材料費、エネルギーコストが上がっているのに、説明もなく単価を据え置く運用は危険です。
公正取引委員会のテキストでは、協議に応じない、必要な説明や情報提供をしない、一方的に代金額を決める行為が整理されています。
支払期日の話と価格協議の話は別に見えますが、どちらも受注側の資金繰りを守るための規律です。
従業員数基準で対象の見落としが起きやすい
取適法では、資本金基準だけでなく従業員数基準も意識する必要があります。
資本金だけを見て「対象外」と判断していた取引でも、従業員数で対象になる可能性があります。
発注側は、取引先マスタに資本金、従業員数、委託内容、支払条件を分けて登録してください。
受注側は、自社と発注側の規模だけでなく、何を委託された取引かも確認してください。
違反した場合のペナルティ
取適法に違反した場合の影響は、単に「罰金がある」という話ではありません。
実務上は、指導・助言、勧告、企業名公表、遅延利息、取引先や金融機関からの信用低下が重くなります。
刑事罰としての罰金は、明示義務違反、記録の作成保存違反、虚偽報告、検査拒否などで問題になります。
支払いが遅れたら即刑事罰、という単純な理解は正確ではありません。
| 区分 | 内容 | 実務上の重さ |
|---|---|---|
| 指導・助言 | 行政機関から改善を求められる | 社内是正が必要 |
| 勧告 | 公取委が必要措置を勧告 | 企業名公表につながる |
| 遅延利息 | 年率14.6%の支払い義務 | 資金負担が大きい |
| 代金返還 | 減額分や未払分の支払い | 過去分の精算が必要 |
| 罰金 | 50万円以下の罰金 | 書面・記録・報告・検査で問題化 |
| 信用低下 | 取引先や金融機関の評価悪化 | 新規取引や融資に影響 |
勧告では企業名が公表される
公正取引委員会は、違反行為があると認めるとき、委託事業者に必要な措置を勧告できます。
勧告では、未払代金、減額分、遅延利息の支払いなどが求められる場合があります。
勧告一覧には企業名や概要が掲載されるため、信用面のダメージは軽くありません。
上場企業や大手取引先ほど、法令違反の公表は調達先選定や金融機関対応にも響きます。
遅延利息は年率14.6%
支払遅延が生じた場合、受領後60日を経過した日から支払日までの期間について遅延利息が発生します。
公正取引委員会の取適法テキストでは、未払金額に年率14.6%を乗じて得た額を遅延利息として支払う義務が示されています。
金額が大きい取引や遅延期間が長い取引では、遅延利息だけでも重い負担になります。
発注側は、支払遅延を「少し遅れた」で済ませない経理体制が必要です。
50万円以下の罰金が問題になる場面
罰金は、主に発注内容の明示、書面交付、取引記録の作成保存、報告・検査対応に関する違反で問題になります。
取適法テキストでは、明示すべき事項を明示しない場合や、記録を作成・保存しない場合に50万円以下の罰金が整理されています。
また、報告をしない、虚偽報告をする、検査を拒むといった行為も50万円以下の罰金の対象になります。
「支払いさえすればよい」ではなく、発注時から記録保存まで整える必要があります。
発注側は書面と記録を2年残す
政府広報では、取引完了後の取引記録を2年間保存する義務が紹介されています。
記録がなければ、支払期日や受領日の説明ができません。
発注側は、発注内容、代金額、支払期日、支払方法、受領日、検査日、支払日を一連で残してください。
受注側も、納品書、作業完了報告、請求書、入金明細を同じ案件名で保管しておくと守りが強くなります。
発注側が今すぐ見直すべき支払条件
発注側が最初に見るべきなのは、契約書の文言ではなく実際の入金日です。
契約書上は60日以内でも、締め処理や検収処理で実際の支払いが遅れていれば危険です。
発注、納品、検収、請求、支払の各日付を並べると、問題のある取引が見えます。
経理部門だけでなく、購買、現場、法務、システム担当を巻き込んで確認してください。
- 受領日から支払日までが60日以内か
- 支払期日を発注時に明示しているか
- 検収完了日を起算日にしていないか
- 手形払いが残っていないか
- でんさいや一括決済で満額現金化できるか
- 振込手数料を受注側へ負担させていないか
- 価格改定の協議履歴を残しているか
契約書の「検収後〇日払い」を見直す
検収後〇日払いという条項は、取適法の60日ルールとずれる可能性があります。
検収が受領後すぐ終わる運用なら問題が見えにくいですが、検収が長引くと危険です。
契約書には、給付受領日から60日以内の具体的な支払期日を置くほうが安全です。
あわせて、検査期間を短くし、検収遅れが支払遅延に直結しない運用に変えてください。
支払条件を「月末締め翌月末払い」に寄せる
60日超のリスクを避けるなら、月末締め翌月末払いのように短いサイトへ寄せるのが現実的です。
月初納品でも翌月末支払いなら、受領日から60日以内に収まりやすくなります。
ただし、毎月の暦によって日数は変わるため、システムで自動判定するほうが安全です。
「翌々月末払い」は、取適法対象取引では原則として見直し候補に入ります。

取引先マスタに取適法フラグを付ける
発注側の実務では、対象取引かどうかを担当者の記憶に頼ると漏れます。
取引先マスタに、資本金、従業員数、委託内容、支払条件、支払手段を登録してください。
新規発注時に取適法フラグが立つようにすると、支払期日の設定ミスを減らせます。
経理システムだけでなく、購買システムや現場の発注フォームも同時に見直す必要があります。
手形から現金振込へ変える資金繰りを準備する
手形払いをやめると、発注側はキャッシュアウトの時期が早まります。
そのため、取適法対応は法務だけでなく資金繰りの問題でもあります。
資金繰り表で、手形払いだった取引を現金払いに変えたときの月別資金残高を確認してください。
対応が遅れると、発注側自身の運転資金も詰まりやすくなります。
受注側が支払い遅延に気づいたときの動き方
受注側が支払い遅延に気づいたときは、感情的に詰める前に、日付と証拠をそろえることが大切です。
相手が大口取引先だと、強く言いにくい気持ちは自然です。
それでも、支払条件を放置すると、資金繰りの苦しさだけが自社に残ります。
まずは受領日、支払期日、実際の入金日、差し引かれた金額を表にしてください。
| 手順 | やること | 残す資料 |
|---|---|---|
| 1 | 対象取引か確認する | 発注書・契約書 |
| 2 | 受領日を特定する | 納品書・作業完了報告 |
| 3 | 支払日までの日数を数える | 請求書・入金明細 |
| 4 | 差し引きや手数料を確認する | 振込明細・支払通知書 |
| 5 | 取引先へ確認する | メール・議事録 |
| 6 | 改善しなければ相談する | 一式の証拠資料 |
まずは法改正を前提に確認する
最初の連絡では、相手を責めるよりも、取適法の60日ルールに合わせて支払条件を確認したいと伝えるほうが動きやすいです。
「〇月〇日に納品しているため、支払予定日は受領日から60日を超えているように見えます」と具体化してください。
感覚的な不満ではなく、日付を根拠に話すと交渉が崩れにくくなります。
電話だけで済ませず、確認内容はメールでも残してください。
遅延利息をいきなり請求する前に証拠を固める
遅延利息は強い交渉材料ですが、いきなり金額請求だけを出すと関係がこじれます。
まず、受領日と支払期日の認識が合っているかを確認してください。
そのうえで、未払いが続く場合は、遅延利息や相談窓口の利用も含めて検討します。
顧問税理士、弁護士、商工会、取引相談窓口に早めに見てもらうのも有効です。
相談窓口へ出す前に資料を整える
公正取引委員会の相談窓口では、価格協議に応じてもらえない、代金が支払われないといった相談を受け付けています。
相談した内容が委託事業者に知られることはないと政府広報でも案内されています。
相談前には、契約書、発注書、納品書、請求書、支払通知、通帳コピー、メール履歴をまとめてください。
相手先名、取引内容、金額、日付、困っている点を1枚に整理しておくと説明が通りやすくなります。
資金繰りは交渉と切り離して守る
支払条件の是正交渉には時間がかかります。
その間にも、外注費、材料費、給与、税金の支払いは来ます。
売掛金が確定しているなら、銀行融資、ビジネスローン、ファクタリング、支払猶予交渉を並行して検討してください。
法的に正しい主張をしていても、手元資金が尽きれば事業継続が難しくなります。

建設業は取適法だけで判断しない
建設業の支払いでは、取適法だけでなく建設業法の確認も必要です。
国土交通省の建設業法令遵守ガイドラインでは、元請負人が出来高払いや竣工払いを受けた場合、下請代金を1か月以内のできる限り短い期間内に支払う必要があると整理されています。
また、特定建設業者が一定の下請負人に支払う場合、引渡しの申出日から50日以内のできる限り短い期間内に期日を定める必要があります。
建設業では、取適法の60日より短い支払規律が問題になる場面があります。
建設業の注意点。
工事請負、資材納入、運送、設計、加工外注では、適用される法律や起算日が変わる場合があります。
元請けの入金待ちは支払い遅延の理由になりにくい
建設業では、元請けからの入金が遅れたから外注先への支払いも遅れる、という連鎖が起きやすいです。
しかし、受注側にとっては、材料費や職人への支払いを先に背負うことになります。
発注側は、自社の入金予定と外注費の支払予定を分けて資金繰り管理する必要があります。
受注側は、元請けの入金予定だけを理由に長期サイトを受け入れないほうが安全です。

建設資材や運送費は支払期日の確認が重要
建設業では、工事代金だけでなく、資材、加工、運送、保管の費用も資金繰りを圧迫します。
取適法の対象になる委託取引では、受領日や役務提供完了日から支払日までを確認してください。
資材価格が上がっている時期ほど、長い支払いサイトは受注側の負担を増やします。
価格協議と支払期日の短縮をセットで交渉することが大切です。

手形廃止対応は現場任せにしない
建設業では、昔からの取引慣行で手形や長い支払いサイトが残っている会社があります。
しかし、2026年の取適法対応と2027年の手形交換廃止の流れを考えると、現場の慣行だけでは危険です。
経営者、経理、現場責任者が同じ支払方針を共有する必要があります。
「昔からこうだから」を残すほど、法令違反と資金繰り悪化が同時に起きやすくなります。

ファクタリングとの関係
取適法の支払期日ルールとファクタリングは、同じ資金繰りの話でも立場が違います。
発注側が支払手段としてファクタリング方式や一括決済方式を使う場合は、受注側が期日までに満額を受け取れるかが問題になります。
一方、受注側が自分の判断で売掛金をファクタリング会社へ売却する場合は、資金繰りを守るための選択肢になります。
同じ「ファクタリング」という言葉でも、誰が導入し、誰が手数料を負担するかで見方が変わります。
| 場面 | 見方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 発注側が支払手段として導入 | 取適法上の支払方法として確認 | 期日までに満額現金化できるか |
| 受注側が自社判断で利用 | 資金調達手段として検討 | 手数料と契約条件を確認 |
| 発注側が手数料を受注側へ負担させる | 問題化しやすい | 満額受領を妨げる可能性 |
| 売掛先の支払いが遅れている | 慎重に審査される | 売掛金の回収確実性が重要 |
受注側の自衛策としては使える
支払い遅延の是正交渉は大事ですが、入金を待っている間の資金不足は別問題です。
売掛先が確かで、請求書や契約書がそろっていれば、ファクタリングで入金を前倒しできる可能性があります。
ただし、手数料を引いた後に外注費や税金を払えるかを必ず計算してください。
短期のつなぎとして使うのか、支払いサイトの根本改善まで使うのかで判断は変わります。

審査では売掛先と証拠書類が見られる
ファクタリング審査では、利用会社の決算だけでなく、売掛先の信用力や売掛金の実在性も見られます。
支払い遅延が起きている取引先の売掛金は、通常より慎重に確認されます。
発注書、契約書、請求書、納品書、検収書、入金履歴をそろえてください。
同じ売掛金を複数社へ持ち込む二重譲渡は絶対に避ける必要があります。

手数料で資金繰りが悪化しないか見る
ファクタリングは入金を早められますが、手数料がかかります。
手数料を払っても外注費や材料費を守れるなら、短期的には意味があります。
しかし、毎月のように高い手数料で回すと、利益が削られて資金繰りがさらに苦しくなります。
支払いサイトの短縮交渉、銀行融資、条件変更、経費見直しと同時に考えてください。

取適法の相談と資金繰り対策は、同時に進めるのが現実的です。
交渉で正しいことを言えても、資金が先に尽きたら守れる事業も守れません。
よくある質問
取適法の支払期日は、日付の数え方を間違えると判断がずれます。
ここでは、実務で迷いやすい質問を整理します。
取適法の支払期日は何日以内ですか?
給付を受領した日から60日以内です。
役務提供委託や特定運送委託では、役務の提供を受けた日が起算日になります。
60日は上限であり、できる限り短い期間内に支払期日を定める必要があります。
請求書を受け取ってから60日以内なら大丈夫ですか?
請求書の日付ではなく、原則として給付を受領した日から数えます。
請求書の到着が遅れたからといって、支払期日を後ろへ延ばせるとは考えないほうが安全です。
納品書や作業完了報告をもとに、実際の受領日を確認してください。
検収完了日から60日以内ではだめですか?
原則として、検査の有無にかかわらず受領日から60日以内です。
検収に時間がかかる社内事情だけで、支払期日の起算日を遅らせる運用は危険です。
発注側は、検査期間を短くし、支払いが60日以内に収まる仕組みにしてください。
支払期日を書いていなかった場合はどうなりますか?
支払期日を定めなかった場合、受領日が支払期日とみなされます。
発注側にとっては、支払期日未設定のまま発注すること自体が大きなリスクです。
受注側は、発注書や契約書に支払期日があるかを必ず確認してください。
手形払いはまだ使えますか?
2026年1月1日施行の取適法では、支払手段として手形を交付することが禁止されています。
紙の手形を渡せば支払いが済んだという考え方は、取適法後は通りにくくなります。
現金振込や、期日までに満額現金化できる支払方法へ切り替える必要があります。
でんさいに切り替えれば問題ありませんか?
でんさい自体が一律に禁止されるわけではありません。
支払期日までに代金相当額の満額を金銭で受け取れるかが重要です。
割引料を受注側が負担しないと現金化できない仕組みは、問題になる可能性があります。
振込手数料を差し引かれたら違反ですか?
発注時に決めた代金から振込手数料を差し引く運用は、代金の減額として問題になり得ます。
合意があったとしても安全とは限りません。
請求額と入金額が違う場合は、差額の理由を確認してください。
遅延利息14.6%はいつから発生しますか?
支払遅延が生じた場合、受領後60日を経過した日から支払日までの期間が対象になります。
未払金額に年率14.6%を乗じて計算する整理です。
実際に請求する前には、受領日、支払期日、未払金額、入金日を確認してください。
違反すると必ず罰金になりますか?
必ず罰金になるわけではありません。
支払遅延では、指導、勧告、公表、遅延利息、未払代金の支払いが実務上大きな問題になります。
罰金は、明示義務違反、記録保存違反、虚偽報告、検査拒否などで問題になります。
どこに相談できますか?
公正取引委員会の取適法相談窓口に相談できます。
政府広報では、フリーダイヤル0120-060-110が案内されています。
相談前には、契約書、発注書、納品書、請求書、入金明細、メール履歴をそろえてください。
建設業も取適法の60日だけ見ればよいですか?
建設業では、建設業法の支払規律も確認する必要があります。
特定建設業者の下請代金では、50日以内など、取適法の60日より短いルールが問題になる場面があります。
工事請負、資材、運送、設計、加工外注を分けて確認してください。
支払いが遅れている間にファクタリングを使ってもよいですか?
受注側が自社の判断で売掛金を資金化する手段として検討することはできます。
ただし、売掛先の支払い不安が強い場合は審査が慎重になります。
手数料を引いた後の資金繰りと、支払条件の根本改善を同時に見てください。
まとめ
取適法の支払期日は、給付の受領日から60日以内です。
60日は請求書到着日や検収完了日から数えるものではありません。
支払期日を定めなければ受領日が期日とみなされ、60日を超えて定めた場合は60日目が期日とみなされます。
2026年改正では、手形払いの禁止、でんさい等の制限、振込手数料負担の問題、価格協議への対応が重要になりました。
違反時は、勧告、公表、遅延利息、未払分の支払い、記録や報告に関する罰金などが問題になります。
受注側は、日付と証拠をそろえ、交渉と相談と資金繰り対策を同時に進めてください。
最後に。
取適法は、弱い立場の会社が資金繰りを一方的に背負わされないためのルールです。
支払期日を知っているだけで、契約書の見方も、元請けへの話し方も変わります。










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